第10回「いじめ・自殺防止作文・ポスター・標語・ゆるキャラ・楽曲」コンテスト


*****************************************************

 

優秀賞受賞作品
「いじめる側が100%悪い」
ウ ノ 


 最初に私がいじめられたのは、小学校一年生のころだった。仲良くしていると思っていた女の子の友達に、二、三日続けて、帰り道ランドセルをガンガン揺さぶられたのだ。はじめは訳が分からなかったが、だんだんといじめられている、と気づいてからは、泣きべそをかいて帰った。泣いていると、近所のおばさんが、「いやなことされたねえ。大丈夫?」と声をかけてくれ、その言葉で、帰ってから母親にいじめられていることを初めて相談できた。その後、母は学校に連絡してくれたように思う。
   
 私は、母に相談した次の日、学校の帰りの会で、お友達に一言伝えるコーナーの時間、「〇〇ちゃん、帰りにいじめないでください。」とはっきり伝えた。するとその日から、まったくいじめられなくなった。これが初めてのいじめ体験だった。
 
 中学生になると、もう少しいやな思い出のいじめが起こった。クラスメイトのある女子に、勝手に私物を机から出して使われたり、よくわからないことで馬鹿にされたりするようになった。彼女から遊ぼうと誘われたが、用事があって断ると、不在かどうか確かめる電話が家にかかってきたりして嫌な気持ちになった。

  この時は、周りに仲のいい友達がたくさんいて、彼女から嫌なことをされそうになると、さりげなくかばってくれた。味方がたくさんいることで、心強かった。さらに、母にもいつもどおり相談をした。学校に連絡はしていなかったように思うが、話を聞いてくれ、絶対的な味方でいてくれた。

  高校生では、恋愛関係のもつれから、仲良くしていたクラスメイトの女子から、卒業まで一言も口をきいてもらえず、無視され続けるというできごとがあった。また、仲良くしていたグループで仲間外れにあう、といういじめも起こった。私は、その都度、母に相談し、話を聞いてもらった。聞いてもらえるだけで、頑張れる力をもらった。

  私の母は、私が小学四年生のころからうつ病で、何度も入退院を繰り返していた。精神的に不安定なところもあった。でも、一人娘が、人間関係で困ったときには、しっかりと話を聞いてくれたし、相談にも乗ってくれた。

  体調が悪い時でも、味方になってくれた。母がうつ病で、子ども時代は苦労することも多かったが、いつも私の味方でいてくれたこと、は、本当にありがたいことだったと思う。
 二年前、母が亡くなったが、私自身が母親になり子育てをし、元気に生きていられるのも、こうした支えがあったからこそだと感じた。

 そして、今現在。
 私の子供が、いじめられている。私の経験した以上のいじめが起こってしまった。
 夫の仕事の都合で、転勤になり、以前住んでいた場所からは遠く離れた都会に、小学3年生での引っ越しとなった。
 子供は、新しく友達ができるか不安だったが、それでもこれからの生活を楽しみに、学校へ行った。しかし、転入して数日すると、学校での困ったことを家で、話すようになった。
 いじめの詳しい内容は、我が子のプライバシーの関係で、明記しないこととするが、簡単に言うと、たたくけるなどの暴力、馬鹿にされたり、仲間外れにされたりするなどが断続的に起こるいじめである。

  これを書いている現在も完全にいじめがなくなったわけではない。親としては学校に行かせること自体ためらわれる時期もあったが、風邪などの欠席以外は今のところ、学校に登校を続けている。

  なぜ、行くことができているかというと、通っている学校と連携して、いじめは絶対にしてはいけないことであることを全校児童に伝えること、教職員全体で子供をいじめから守ってほしいということを、親からお願いしたからである。転校したばかりで、味方の少ない我が子にとっては、大人である先生たちが一番の応援団になった。とても心強い。そのおかげで、今日も学校に行くことができている。

  どうか、同じようにいじめを受けている子どもたち、そしてその親御さんに、知ってほしいことがある。

  現在は一昔前とちがって、いじめに対する法律ができ、いじめは絶対にしてはいけない行為であるということがはっきりしている。
法律の名前は「いじめ防止対策推進法」。
いじめられるほうも悪いところがあるのでは、というのが少し前までの認識だったように思うが、時は流れ、いじめることは人間として絶対に許されないという行為という押さえになった。いじめる加害側が、百%良くないという形だ。この法律は、いじめでの自殺事件が契機となり、2013年に施行された法律である。

 この法律をもとに、日本全国の各学校はいじめ防止の基本方針を打ち立てている。悲しい事件を二度と起こさないように(それでもいじめはなくならず、子どもたちが命を落とす事件は起こってしまってはいるが)、学校も、一昔前とは違っていじめをなくすよう、しっかり対策を取らなければならなくなったのだ。

 だから、どうかいじめで悩んでいる子供たちは、助けてあげられる存在は身近にいるから、まずは「助けて」と声を上げてほしい。加害側から、「いじめていることをばらしたらゆるさない」などの脅しを受けても、絶対に大人に助けを求めてほしい。信頼できる人なら、友達でもいい。塾の先生でもいい。親戚でもいい。自分のことを大事に思ってくれる誰かに、絶対に打ち明けてほしい。

 学校も、親も、いじめを受けて苦しんでいる子供たちを助けたいと思っている。解決したいと願っている。いじめで亡くなってしまった子供たちが残した法律も、いじめられてる子への助けとなる。ただ、誰にも気づかれないままになってしまうと、救うことができない。

 もし、万が一、学校や親に思い切って、いじめを受けていることを打ち明けても、助けてもらえなかった場合はどうすればよいだろう。

 ほかには、弁護士会で人権を守るためのいじめ相談窓口がある。自分の住んでいる街の教育委員会や教育センターにもいじめ相談窓口がある。インターネットさえ使うことができれば、日本全国に、絶対に助けてくれるところが見つかる。

 必ず、どこかにあなたを助けてくれる人がいる。場所がある。必ずだ。
だから、いじめで苦しんでいる、悲しんでいる子供たち、絶対に助けを求めてほしい。

 私は、病気がちであっても、いじめがあったときには必ず寄り添ってくれた母のように、我が子もいじめられたときは、絶対的な味方になり、いじめは許されないという姿勢で、立ち向かっていく。

  また、いじめの発見が遅れ、心の傷が大きい場合は、学校を休んでいじめから逃れることも大切である。人と人とのかかわりがいじめを生む以上、すぐに解決が難しい場合は、そのフィールドから立ち去るのも、得策である。親御さんの中には、逃げることが良くないと思う人もいるかもしれないが、それも一昔前のこと。何より大切なのは、子どもの命と心と体だ。
 いじめを受けることは恥ずかしことではない。人間である以上、他者のとかかわりの中で、起こりうる悲しい現象だ。

 でも、一つでも助けがあれば、絶対に解決し克服できることでもある。
 どうかこの声が、全国のいじめで悩んでいる子どもたちに届くよう、強く強く願っている。
 子どもたちすべてが、明るく輝く笑顔で、過ごせますように。